津軽半島の陸奥湾沿いに位置する蓬田村。そこで作られたトマトにほれ込み、7月から青森市古川の中心部「昭和通り」近くに同村の野菜を販売する「マグワートトマト」(平日午前ん11時~午後7時)をオープンし、一人で切り盛りする。「マグワート」は「ヨモギ」を意味する。
県内産のトマトは、昼夜の寒暖の差により甘みが増し、味が濃いものが多い。蓬田産は県産の中でも北限にあるといい、「寒暖の恩恵を最も受けている」と説明する。
今年4月、夫の克さんと東京都内から青森市に移り住んだ。それ以前も盆や正月になると、ほぼ欠かさず克さんの同市内の実家に行った。その度、克さんの親友がいる蓬田にも足を運び、トマトだけでなく、海山の食材のすばらしさを知った。
2012年に克さんの母親が亡くなり、実家が空き家となった。三回忌となる今年、「青森に住もう」と夫婦で決めた。生まれも育ちも東京だが、すでに「第二の故郷」となっていた青森での新生活に躊躇はなかった。
克さんはIT関係の仕事から一転、蓬田でトマトをつくる「通い農家」になった。同産トマトは、県内で最も早く栽培を始めた「桃太郎」を筆頭に、皮が薄くサクランボのような食感の新品種ミニトマト「ベビーベビー」、糖度が高いフルーツトマト「華小町」など4種のブランド品がある。だが、販売する店は村内の物産館などに限られた。
「こんなおいしいトマトをもっと広める方法はないか」。夫婦で会話するうち、青森市内に直販店を作ろうとなった。決めたらすぐ実行–。青森に来てわずか3ヶ月で店を開いた。
現在は3軒の契約農家で朝に収穫されたトマトなどを克さんが店に運ぶ。毎日の売り切りを原則としているため入荷量は少な目だが、トマトのほか、枝豆やキュウリなどの野菜も並ぶ。「『あれ今晩食べたいなー、売れ残らないかなー』と思うこともある」と笑う。
トマトの販売は10月末ごろまでで、以後は冬野菜などを販売する予定だ。地方発送のほか、秋にはホームページを立ち上げるという。「ここを窓口に発信し、ゆくゆくは東京で『蓬田産トマト』として広めていきたい」(石塚広志)
転載:朝日新聞青森版 2014/8/24
蓬田トマトに恋して 2014/8/24 朝日新聞青森版